十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『老衰』

ふと ページをめくる手が止まる
栞を挟み 閉じた本の厚さを感じて我に返る
もう、こんなにも読み進めていたのかと
末尾に綴られる物語
忘却の彼方へと向かうことはないだろうか
蝋燭の灯火が これまでの人生を儚くも照らしてくれた
終章へとページをめくる
手が勝手に過去を振り返りだす
拍手喝采 そんな夢物語の結末ではない
今思えば 小さな灯火を消し去るような風もなかった
選ばれし者でもない ……だけど、幸せだ
何かに感謝すべきなら
いつまでも傍にいてくれている全ての人に伝えたい。

不死も幻ではない、と。


最後のページをめくった時、灯火により本は灰と化し、人々の記憶からもいつかは廃れるのだろう。
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