十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『灰かぶり雛』

今回は『灰かぶり姫』ではなく、『灰かぶり雛』です。


10年ぶりに実家にある自分の部屋の押し入れを開けた。

小学生の頃に使っていた勉強道具や遊具などが乱雑に仕舞われていた。

その中から掌サイズの人形を見つけた。

ホコリのかぶった人形は、どこか寂しげに見える。しかし私はその人形に憶えがなかった。

押し入れにある他の物に関しては、僅かながらにも記憶が残っているのに。

両親に聞いてみても知らないの一点張り。少し不気味に感じた私は、その人形をすぐに捨てることにした。

記憶に無かった物は、無かったことにしてしまえば。


それからさらに3年後。実家を引き払うことになり、再び押し入れを開けた時、記憶の無い人形がそこにいた。

しかしこのホコリのかぶった人形は20年前の物とは違う。一緒であれば記憶に残っているはず。

人形が勝手に動くようなことはありえない。万が一動いたとしても、自ら灰を被るだろうか。

今度はすぐには捨てずに、その人形にこびりついたホコリを拭いてあげることにした。

しかし拭いても拭いても、そのホコリは取れなかった。

すると、魂が乗り移ったのか、その人形が唐突に言葉を発した。

“ワタシハモウ、シンデルノ”

「え」

“ホントウニシンダラ、ヒトノキオクカラモ、イナクナルノ”
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