十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『わする』

「ねえ、今日って何の日だっけ?」

「何の日って、今日はお祭りだろ。だから二人して浴衣に身を包んで神社に来てるんじゃないか」

「ええ確かに今日はお祭りね。でも、もっと大切な日でもあるの。そもそもわたしにこんな質問をさせてる時点で問題だわ」

「大切な日って?」

「……はあ、今日はわたしたちの結婚記念日よ。しかも初めての」

「結婚記念日はらいげ……あ」

「“あ”じゃないわよ。こっちはどれだけこの日を楽しみにしてたと思ってるの? “お祭りに行こう”って誘ってくれたから、何かここでサプライズでもしてくれるのかと思ってたけど、全然そんな素振りもしないじゃない。もう我慢の限界よ」

「いやいやいや、こ、これから、そ、そのサプライズ、サプライズをやろうと思ってたんだよ。じらした方が効果あるかなって」

「サプライズを予告しちゃったら、驚きも感動も台無しじゃない」

「そんなことないよ。ほら、このタコ焼きでも食べる?」

「いらないわよ」

「そんなこと言わずにさ。このタコ焼き美味しいよ。それに喉元過ぎれば熱さを忘れるっていうじゃないか」

「知らないわよ」

「それにほら、こういうお祭りとかって縁日って言うだろ。良いご縁がある日が記念日なんて運命的だと思わないかい?」

「どうだか」

「折角だし、ちょっとお参りして行こうよ。縁日に参詣するとより御利益があるんだってさ」

「勝手にしてよ」

「君と過ごしてiいる日々を一生忘れることのないようにして下さい。それが僕の願いです」

「……その願い、叶えてよね」
スポンサーサイト