十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『ハトの談義』

田舎主人に飼われているニワトリのところに一羽のハトがやってきました。

「おい、ニワトリや。君たちはそんなところにいて幸せなのかい?」

ニワトリは柵の内側にいて、ただ黙々と餌を食べ続けます。するとニワトリが一言返します。

「おれたちは、毎日こうして食べ物に困らないからな」

ニワトリたちの様子を眺めていたハトも言い返します。

「お前たちは何も知らないのか? そんなに食ったって、最期は人間に食べられちゃうんだぞ」

「そんなこと知ってるさ。仲間もすでに数羽食われてる」

「知っていて、なぜ食うのをやめない?」

「それがおれたちの宿命だからさ」

その言葉に、ハトも声を詰まらせます。すると、今度はニワトリの方から聞いてきました。

「あんたたちハトは、いつも何食ってんだ?」

ハトは胸を張って答えます。

「そりゃ、いろんな物さ。お前たちみたいに毎日同じものばかりじゃ、飽きちゃうからな。それに人間に食べられる心配もない」

「そうか。でもよ、どうして同じ鳥なのにあんたたちを人間は食おうとしなんだろな」

「……まあ、不味いからな」

「不味い? どうして?」

「俺がいつも食ってるのは、ゴミばかりだ。美味いものに巡り会えるなんてのは稀だからな。でもだからって、僻んでるってわけじゃない。人間に食われないためには仕方ないんだ」

「わからないな」ニワトリは小さく呟きます。

「どうせ俺たちの命は短いんだ。それだったら美味いもの食べて死んだ方がいいだろう」

ニワトリのその言葉に、ハトは逆捩じを食わせます。

「それはただの諦めだ。諦めた奴には救う価値なしだ。ほらお前にも迎えが来たみたいだぞ。それじゃあな」

ハトはそう言うと、空高く飛んでいきました。飛び去った後には1本の羽根が落ちていました。その羽根はカラスの羽根のような色でした。
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