十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

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『愚者とアルカナ』

とある小さな町外れに、アルカナという名の12歳の少女がいた。
アルカナには両親がおらず、70歳のおばあちゃんとの二人暮らし。しかし、二人は生活に困難しているわけではなかった。

その理由は、アルカナにあった。
アルカナには不思議な力があり、町中の人々が彼女の不思議な力に頼っていた。その力とは無くしたものを捜し当てるというものだった。
そもそもアルカナという名は彼女の本当の名ではない。彼女がその力を発揮する際に、「あるかな?」と呟くことから彼女のことを皆がアルカナと呼ぶようになったのだ。

そしてこの日も、彼女の力を求めて一人のピエロが訪れた。

「アルカナちゃん、お願いします」

「何を捜して欲しいの?」

「僕が仕事で使ってるコインが盗まれたんだ。あれがないと仕事ができない」

「う~ん、あるかな?」

お決まりの呟きとともにアルカナは瞑想する。そして「あ」と声を上げたアルカナはピエロに言う。

「あったよ」

「本当! いったいどこに?」

「ほら、今あなたのポケットの中に入ってる」

「え」

ピエロが自らのポケットを確認すると、確かにそこには一枚のコインが入っていた。

「ああ、なんてこった。こんなところにあったのか!」

「ねえ、ピエロさん。ちょっと聞いてもいい?」

「ええ、なんなりと」

「あなたはいつも笑いながら泣いているのね。今は無くしものが見つかって嬉しいの? それとも自分の間抜けさに呆れてしまって悲しんでるの?」

「それは、どちらも違います。僕が笑いながら泣いているのは、僕がただ愚かな存在なだけです。それ以上でも、それ以下でもありません」

「なんだかよくわからないわ。だけど、あなたの瞳は不思議なほど澄んでいるのね」

「ありがとうございます」



その後、そのピエロは見つかったコインを使い、町の中心で達者な芸を披露していた。その芸を見ていた一人の子どもが言う。

「ピエロさん。それいつも使ってるコインと違うね」

ピエロはその言葉に笑いながら泣くだけで、肯定も否定もしなかった。
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