十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『聖なる夜はイミテーションで』

「ねえママ、早くケーキ食べようよ」

「ちょっと待っててイルミ。今紅茶淹れるから」

純度の高い宝石のような瞳を輝かせながら、イルミはママが淹れてくれている紅茶の香りを楽しんでいた。

二人分の紅茶を淹れ終えたママは、イルミが待つテーブルに座る。そして二人でケーキを食べているとイルミが言った。

「ねえママ、今日パパは?」

「パパはね、今日お仕事で遅くなるって。残念だけど仕方ないの。今日は先に寝なさいね」

「はーい」

するとケーキを頬張りながらイルミがママに訊いた。

「ねえママ、サンタさんって本当にいるの?」

少し返答に困ったママだったが、あらかじめ用意していた答えを言う。

「いるかいないかはイルミ次第よ。サンタさんはね、天使とか神様とかと同じような存在なの。人々の信仰によって存在している。だからイルミもサンタさんに会いたかったら信じて待つこと。そうすれば夢の中で会えるかもしれないわよ」

「ほんと! わかった。じゃ今日はもう寝る」

ママの言葉を聞いて再び目の色を変えたイルミは、ケーキを食べ終えると急いで寝支度をした。お風呂に入ってパジャマに着替え、自分の部屋に入るなりすぐにベッドに横になった。そして部屋の明りを消してママを呼ぶ。

「ねえママ、おやすみなさい」

「おやすみイルミ」

ママは商事の後片付けをしているようで、食器のぶつかる音や水の音などに混ざってママの声が聞こえた。


しばらくしてイルミが寝ついたことを確認したママは、こっそりと別の部屋に隠れていたパパを呼んだ。

「もう大丈夫よ」

「そうかい。それじゃ準備しようか」

実はママとパパは娘のイルミのために、こっそりとサプライズを計画していた。そのサプライズを知ればイルミは驚いて飛び起きるかもしれない。ママとパパは慎重にサプライズの準備に取り掛かった。

ただ、当日の準備といっても簡単なものであった。

寝静まったイルミの部屋に夫婦二人で入り、そしてイルミの首を絞めてあげるのだ。

「……ねえ……ママ?」

薄れいく意識の中、イルミは蚊の鳴くような声で訊く。すると潤んだ瞳のママが語りかけるように言った。

「ごめんねイルミ。わたしたちには本物の子どもができたの。あなたは元々他人の子。わたしたちの本当の子どもじゃない。それは前から知っていたでしょ。だからもうあなたは必要じゃなくなったの」
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