今回は、ペロー童話『青ひげ』ではなく、『青かげ』です。
その日は、一日中泣いていた。
傘を差していても、全く意味がないほど。
あの人は、私の前から突然いなくなった。
蒸発したのなら、いつか水滴となって再び私の前に現れてくれはしないだろうか。
そんな雲を掴むような想いは届きはしない。
現実は残酷にも目の前を通り過ぎていく。
あの人の映ったかげをいつまでも追い続けることに、何の意味もないことはわかっている。それでも追いかけ続けてしまうのは、私のせいではない。悪いのはかげが消えてくれないからだ。
あの人はいなくなったのに、そのかげは今でもずっと私の視界に時折現れる。
そのかげがはっきりと見えるのが、泣いている日。
空模様と相俟って青く見えるそのかげは、何も語らず、ただ私のことをそっと見守るような態度でいる。
相手はかげだから、突き飛ばすことも振り払うこともできない。瞼を閉じても開けばそこにいる。
どうすればいいのか。悩む私に機転の利く友人がこう助言してくれた。
「ふつう、かげって光を当てるとより濃くなるけど、あんたの場合はむしろより強い光を当てた方が良いかもね」
強い光と言えば太陽だろうか。
「太陽ねえ。単純だけど、それでも上に目を向けただけでも進歩かな」
その友人は答えを教えてくれはしなかった。だけど、かげを畏れ迹を悪んでばかりもいられないのかもしれない。
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