十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『青かげ』

今回は、ペロー童話『青ひげ』ではなく、『青かげ』です。



その日は、一日中泣いていた。

傘を差していても、全く意味がないほど。

あの人は、私の前から突然いなくなった。

蒸発したのなら、いつか水滴となって再び私の前に現れてくれはしないだろうか。

そんな雲を掴むような想いは届きはしない。

現実は残酷にも目の前を通り過ぎていく。

あの人の映ったかげをいつまでも追い続けることに、何の意味もないことはわかっている。それでも追いかけ続けてしまうのは、私のせいではない。悪いのはかげが消えてくれないからだ。

あの人はいなくなったのに、そのかげは今でもずっと私の視界に時折現れる。

そのかげがはっきりと見えるのが、泣いている日。

空模様と相俟って青く見えるそのかげは、何も語らず、ただ私のことをそっと見守るような態度でいる。

相手はかげだから、突き飛ばすことも振り払うこともできない。瞼を閉じても開けばそこにいる。

どうすればいいのか。悩む私に機転の利く友人がこう助言してくれた。

「ふつう、かげって光を当てるとより濃くなるけど、あんたの場合はむしろより強い光を当てた方が良いかもね」

強い光と言えば太陽だろうか。

「太陽ねえ。単純だけど、それでも上に目を向けただけでも進歩かな」

その友人は答えを教えてくれはしなかった。だけど、かげを畏れ迹を悪んでばかりもいられないのかもしれない。
スポンサーサイト