十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『いぎたない』

「まただね」


「本当だ」


「どうしてこうなっちゃうんだろうね」


「どうしてかな」


「悪い夢でも見てるのかな」


「悪い夢?」


「なんだか苦しそうじゃない」


「元々こんな顔じゃなかったかな。あんぱんをフライパンで叩いたような」


「ははっ、そうだね。あ、そうだ! ちょっと悪戯しちゃおうか」


「いいね、どうしちゃう?」


「このまま船に乗せて川に流しちゃおうか」


「それは最高だ。そのまま海の彼方までいっちゃうんじゃないの」


「でも、途中で起きた時の顔も見物だろうね」


「うんうん。それじゃ早速」


《ヨイショ!》


「――どう?」


「ぜんっぜん起きない」


「ふふっ、白河夜船ってこんな感じのことかな」


「ん? 何それ?」


「え、いや……あ、ひっくり返った」


「あ、本当だ」


「……浮いてこないね」


「こないね」


「悪夢だ」


「うん。悪夢だ」
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