十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『しつこく』

「兄者、どうのようにすればうまくいくとお考えで?」


「弟者よ、つまらん冗談はよせ。こちとら、初めから真剣に挑んでおるのだぞ」


「しかし兄者、もう何度目ですかい。うまが合わないにもほどがありますゆえ」


「弟者よ、お主はまだ若いから儂の気持ちなど到底解るまい。それにだ、つまらん冗談はよせと言っておろうが」


「……確かに解りかねます。ですが、このままではもう私は付いてはいけませんぞ。老いたる馬は道を忘れずといった言葉もまやかしか」


「弟者よ、しばしの間口を挟まんでくれ。気が散るばかりか、尻も痛とうなってきたわい。それとお主の執念深さには感服したぞ。儂の武勇伝すら霞んでしまう」


「努々そんなことはありません。兄者がこれまでに築き上げてきた勲功たるや、むなしく馬齢を重ねてきた私とは天と地ほどの差がございます」


「ぬっはっは。もう御免だ。お主の冗談は尽きることがなさそうだ。故に儂の馬術の衰えは素直に認めざるを得んことだな。――騏驎も老いては駑馬に劣るのだろう、弟者よ」


「ようやくうまいこと言えましたな、兄者」
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