十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『悪戯好きな妹』

私には、年の離れた妹がいる。

妹は昔から私になんでも頼ってきて、わからないことがあるとすぐに聞いてきたり、両親に怒られたときも私にすがってきていた。そんな妹のことが、私は大好きだった。

私が思春期のころ、両親との間にいざこざがあり、精神的にも追い詰められていたせいで、妹のことを構ってあげられない時期が続き、時にはその苛立ちを妹に向けたこともあった。

当時の私は、どうかしていた。あんなにかわいい妹を悲しませるなんて。

そんなある日だ。
私が朝食をとりに食卓につこうとすると、私がいつも座る席の前にあった箸の片方が逆向きに置かれていた。茶碗やおかずの食器などを用意してくれるのは母であったが、箸だけはいつも妹の役割だったので、その行為がすぐに妹によるものだと気づいたのだが、私はその場ですぐに隣に座っていた妹に尋ねることはしなかった。その時はただ自分に構って欲しいという妹の、ほんの悪戯心だと思ったから。

しかし、その日から妹の行動は目に余るようになっていった。

私がいつも使っている化粧水が上下逆さまになっていたり、私の部屋にある全ての靴下の片方が裏返しになっていたり、さらには私のブラジャーの片胸だけを凹ませ、そしてごみ箱に捨ててあったのだ。

妹の悪戯にどんなメッセージが込められているのか。私には十分に汲み取るとができなかった。

だからここまでくると、どんなにかわいい妹でも年輩者として注意せざる終えなかった。

「あなたはいったい私に何をして欲しいの? それとも何か教えて欲しいの?」

私の言葉に妹は、指先を絡めて小さく何か言った。しかし、私の耳には届かない。だからもう一度訊くと、今度はハッキリと聞こえ、鼓膜の振動が私の心を揺らした。


「……パパもママも言ってた。さかさまになっちゃったって。でも、それは自分で気づかなくちゃいけないんだって。ね、おにいちゃん」
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