十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『似た色の世を知る』

私の幼馴染みであるJは、恋多き人だった。

Jの傍らには常に恋人がいて、その恋人は短い期間で入れ替わっている。いったい今まで何人ものの相手と浮き名を流していたのかすらわからないほど。
恋愛とは一種の良薬であり、その薬の効果が切れると禁断症状が出てしまうのだと、Jは語っていた。

そんなJから相談を受けた。Jの相談に乗るのは今までにも何度もあった。基本的にはその時に付き合っている恋人の不平不満だったり新たな恋人への悩み事だったりする。しかし、大抵Jの相談は解決策を私に求めるのではないようなので、私は適当に相槌を返すだけで十分だった。


今回もそうだった。

「いったいどうしたらいいのか、全くわからない。色々と悩みすぎて苦しいんだ。なんだか血管から血液が漏れ出して、それが身体を蝕んでるんじゃないかなあ。毒みたいに」

自分の弱いところを見せて、相手の心の隙間に入ろうとする。Jの常套手段だった。

「毒と言えば、蠍の毒って猛毒のイメージがあるけど、ほとんどの蠍の毒には人を殺せるほどの毒じゃないらしいよ。神話で女神が放った蠍に、オリオンが刺されて殺されちゃうから、そのイメージが根付いちゃったんだろうけど」

ちょっとした知識をひけらかすのも、Jの得手に帆を揚げるところ。

「そんなオリオンにはなりたくはないけど、自分はオリオンに似ている気がするんだ。……最も親しい女神に愛されていないところがね」

相槌を返す私は内心、首を傾げていた。私にとってJは、毒にも薬にもならない。
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