十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『白馬の王様』

 とある小さな国の王様は、毎日自慢の白い愛馬に乗って散歩をするのが日課でした。
 最初は気分転換のつもりで始めた散歩だったのですが、いつしか国中の民のご機嫌伺いとなり、王様にとっては国の内情を肌で感じることができる良い機会でもありました。

 そんなある日、いくら援助をしても、貧しいままでいる村があるという噂を耳にして、王様は国の外れにあるその村を訪れました。そこで、道端に座り込む一人の村人に声をかけました。

「お主、この村で困っていることは何かあるか?」

 その問いかけに、村人は震えながら答えます。

「いいえ、王様。私たちの村はすでに国から様々な褒美をいただいておりますゆえ、これ以上望むものなどありません」

「それはまことか。ではなぜ、お主の身なりはそれ程までに貧相なのだ?」

「これは、戒めです。私たちにとって贅沢は毒。毎日ご飯を頂けるだけで十分なのです」

 贅沢は毒。その言葉が王様にとっては驚きで、そういった考えを持つ人がいることが不思議に思いました。そこで、三度問いかけます。

「それでは、お主にこの私の馬はどう見える?」

 白く宝石のように輝く毛並みの白馬。村人が近づくことさえできないほどに、神々しいオーラを放っています。

「私には、王様のものをどう見えるのかとお答えすることは、大変失礼に当たります。ですから――」

「構わん。申してみろ」

 王様の言葉に、村人は一度つばを飲み込み、意を決して口を開いた。

「……そうですね、私には骨のようにしか見えません。ああ、ですがとても太くて立派な骨です」

 そう言われ、王様は改めて自慢の愛馬を見つめます。

「どこの馬の骨ともわからんやつに言われてしまったな」

 すると、王様の言葉に白馬が応えました。

「わたしは構いません。もう老馬ですから。とはいえ彼の言葉をしっかりと心に留めることが大切ですよ。あなたは馬ではないのですから、念仏もしっかりと届いているのでしょう」
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