十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『告白のお礼に』

 先日は、こんな私に告白をしてくれてありがとう。好きな人に告白するって、相当結城がいるもんね。だからあなたが私に告白してくれたこと、本当に嬉しかった。
 でもね、私にとっては寝耳に水。まさかあなたに告白してもらえるなんて思ってもみなかったの。だからあの時は、すぐに返事ができなかった。嬉しさよりも驚きが多くて、頭の中が真っ白だった。悪いとは思ったのよ。でも一度、自分の中で整理してから答えを出そうって。

 思い返せば、小さいころからあなたは私に夢中だった。よくある話ね。好きな女の子に対して汚い言葉を言ったり、物を取ったりしていじめるやつ。そのせいで私はあなたのことばかり考えさせられたわ。まあ当時は、ムカつくっていう気持ちが一番だったけど。
 私も仕返しをしたのは覚えてる? ああでもあなたは鈍感だから、私の仕返しには気づいていなかったわね。消しゴムが無くなったり靴が汚れていたりしていたのは、私の仕業よ。

 それにあなたは普段から私のことを見てたでしょ。気づいていないと思ったら大間違いよ。他のみんなと一緒にいる時だって、瞬きする度に私に視線を送ってた。それに気づいていないふりをするのも大変だったんだから。だってあなたは、私と目線が合うとすぐ逸らすでしょ。私はあなたの視線が痛いほど嬉しかったのよ。あなたの視線は、ゆっくりとでも確実に私の皮膚を破いて入ってきていた。そして不思議な液を私の体内に注入するの。
 あれって何? その度に身体が熱くなるのよ。

 そんな私にあなたは告白した。あなたは自分の中に溜まっていたものを、一気に吐き出したんだから気分良いのかしら。それとも返ってこない返事にもどかしく煮えたぎっているのかしら。
 どちらにせよ、もうどうでもいいわね。

 私がこうしてあなたへの返事を封書にしたためているのは、これからもずっと残しておきたいからよ。
 どうしてかって。それは今、あなたの寝ている傍で書いているからよ。
 驚いた?
 ごめんなさい。
 告白のお礼に、これだけは置いておくわ。大切にしてね。
 かしこ 宮西静子より


 彼女からの手紙と一緒に置いてあったのは、小さく寝息を立てる彼女自身だった。
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