十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『むくいる』

「先輩、実はわたし、好きな人ができちゃったんです」

「へえ、そうなんだ。あれ、もしかしてその人物は先輩でしたってオチ?」

「何言ってるんですか。勘違いも甚だしいですよ」

「辛辣だなあ。良いじゃないか少しぐらい期待しても」

「ダメです。先輩には素敵な奥さんがいるじゃないですか」

「そうだった。ごめんごめん」

「そうですよ。それで、誰だと思います?」

「えー誰だろう? もしかして、おれの親友の慎一とか?」

「ぶー、違いまーす。ヒントは、意外な人です」

「意外な人? まさか弟の圭介じゃないだろ」

「残念、はずれです。正解は、元カレです」

「え、どうしてさ。あんなに酷いことされてたのに」

「なんか、どうでも良くなっちゃったんです」

「ダメだよ、そんなんじゃ。相手はしっかり選ばないと」

「良いじゃないですか、好きになるぐらい。別に告白するわけでもないのに」

「そうだけど、なんか裏がありそうだね」

「あ、やっぱりばれちゃいましたか。復讐ですよ。あいつ今、楽しそうにかわいくない女とイチャイチャしてるんで」

「ああ、なるほど。でも復讐は良くないよ」

「それじゃ言葉を変えて、お礼参りに行ってきます」

「ヤクザみたいなこと言わないでよ」

「違います。わたしあいつに殺されましたけど、感謝してるんです。先輩とこうしていつでも話せるんですから」

「なら、その役目はおれだろ」

「いいえ、先輩じゃあいつを殺しちゃうでしょ。わたしはあいつに取り憑いて、苦しめてやるんですから」
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