十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『羽根虫たちの夢』

仲間が集まる光に向かって飛んでいると、背後から声がした。

何がやりたいのかって、そいつは唐突に聞いてきた。

初対面の相手に対して不躾な質問だなと思い、俺は無視してやった。

それでもそいつは何度も同じ質問をしてくるので、俺の我慢も限界になった。だから答えてやった。

「知らん!」って。

するとそいつはウシシと嗤った。腹が立った俺は、そいつに同じ質問をしてやった。お前こそ何がやりたいのかって。

そしたらそいつは嗤うのを止め、真剣な顔つきになったかと思うと、急に夕日を見て黄昏れる人間のように語り出した。

「探してるんよ。本物の光を。こんな小さくて冷たい光じゃなくてさ。もっと遠くにあって、そんでもってでっかくて温かい光をよ。こうして俺たちが集まっている光ってのは、人間たちが作り出した偽物の光だ。こんな小さくて冷たい光だとすぐに届くもんだから、阿呆どもは頭ぶつけて死んじまう。俺みたいに賢いもんは、やっぱし目指すもんが違う」

「目指すもの?」

「ああ、そうや。要するにゆめや、夢」

するとゴムボールが跳ね返るようにそいつは躯を翻して俺から離れた。

「夢はでっかくて温もりがある方がいいに決まってる。その方が迷わず進めるだろ。あんたもそうしな」

そいつは俺よりも少し小さいくせに、俺の目に映るそいつの後ろ姿は、離れていくのになぜだか徐々にと大きくなって見えた。そして、次の瞬間には暗闇に紛れていった。
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