十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『死神とアルカナ』

これは夢のお話。

死神はアルカナに言った「私にそっくりだ」と。

それを受け、アルカナは首を傾げる。

「どこが似ているというのかしら?」

「私はもうすぐ死ぬ人間のもとに現れ、生から死への導きをしている。つまり皆私を必要としているのだよ。人は生きていれば必ず死が訪れる。その際に私がいなければ、この世を彷徨うことになるからね」

するとアルカナはかぶりを振った。

「あたしはあなたほどではないわ。あたしのことを疎ましく思う者も必ずいるはずよ」

「それは私も同じさ。死神に会いたいと思っている人間なんているわけがないだろ。私の存在は疎ましいものでもある」

「それならもっと違うわ。あたしに会いたいと思う人は少なからず存在する。あなたと違ってね。それにあたしが捜し物を捜すのは、人に頼まれてからよ。でも、あなたはあなたの意思で捜しているじゃない。そこが大きな違いだわ」

アルカナの言葉に、死神も少し言葉を詰まらせる。しかし、負けじと口を開く。

「私にもね、人に頼まれることもあるのさ。死にたいと。そんな時は喜んでその人のもとへ向かう」

苦し紛れの言葉にも聞こえたが、嘘ではない。確かに、時に人は自ら死を求める。

「ところで死神さん。あなたがあたしのところに来たってことは、あたしはもうすぐ死ぬのかしら?」

すると今度は死神がかぶりを振る。

「いいや、君に会いに来たのは、ひとつ忠告しておきたいことがあってね」

「忠告?」

「そう、もうすぐ君にある悪い知らせがやってくる。そんな時、君はその不思議な力を使うことになるだろう。でも、そこで間違ってはいけない。君は死んだ人間を捜すことはできないが、死のうとしている人間は捜すことができるってことを」

「それはあたしに誰かを救えってことなのかしら」

「その質問に答えることはできない。生かすことが救いなのか。殺すことが救いなのか。私は後者を選ぶが、君はどうかな?」

「そう、ならやっぱり……」と小さく呟いた後、死神にアルカナは言った。

「あたしにそっくりね」
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