十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『あいすむ』

「これ、先輩の請け売りなんだけどね」

「何だよ急に」

「いいから聞けよ」

「うん」

「クリスマスの日にイルミネーションを見に訪れるカップルは盲目になるんだ」

「それってただの皮肉ってやつじゃ……」

「いや、まだ話は終わってない。でも確かに盲目になるのは、その雰囲気のせいでもある。だけど、そのカップルたちの背後には目に見えない導火線がついてるんだ」

「導火線? それに火をつければ爆発するってか」

「鋭いな。でも、ただ爆発するんじゃない」

「カップルを爆発させるって時点で、皮肉丸出しじゃないか」

「まあ、聞いてくれ。爆発はする。でも黒い煙を立たせて爆発するんじゃない。空に舞い上がり、虹色の閃光となって爆発するんだ」

「……それって花火になるってこと?」

「そうさ。行き交うカップルたちは夜空に舞う花火となって、よりいっそうクリスマスを彩ってくれる」

「う~ん。まあ、喩えとしてはおもしろいかもな。でもさ、その導火線に火をつけるのは誰なんだ?」

「そこが重要なんだ。点火するのは、クリスマスに独りぼっちの人間でも、ベテランの花火師でもない」

「じゃあ、誰なんだ。まさか『おれだ!』って言うんじゃないだろうな」

「……まさか。その導火線を見つけるには二つ条件が必要なんだ」

「条件?」

「そう、ひとつは自分自身がカップルでいること。そしてもうひとつは、その相手と永遠を誓い執行すること」

「それってつまり、老夫婦ってこと?」

「ご名答。しかし老夫婦となると夜目が鈍い。更には寝るのも早い。だから、恋人花火師はなかなか見つからない。残念なことにね」

「なんだよ。恋人花火師って」

「喩えさ。愛を具現化する技師は一人じゃ出来ない。どちらもカップルじゃなきゃならないんだ。そして導火線に火がついたカップルは花火となり、いつしか自らが恋人花火師となる」

「なあ、もしかしてその請け売り先の先輩って……」

「そう、俺のおじいちゃんおばあちゃんのさ」
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