十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

『長靴をはいた孫』

『長靴をはいた猫』という物語は有名ですが、『長靴をはいた孫』という話をします。


これは山間にある小さな田舎町に住む、おじいさんとその幼い孫のお話。

ある孫の誕生日に、おじいさんは新しい長靴をプレゼントしました。それまで孫は、だいぶ前に買ってもらった一足の靴だけを、晴れの日も雨の日も毎日はいて過ごしていたので、ものその靴は泥で汚れボロボロになっていました。

孫はその長靴をたいそう喜びました。その日から晴れているにも関わらず、孫はその長靴をはいて外で走り回っていました。

それから数日が経ち大雨が降り出しました。孫は待っていましたと言わんばかりに、合羽を羽織って長靴をはき、雨の降る中家を飛び出していきました。

おじいさんは最初、喜びはしゃぐ孫を見て微笑んでいましたが、その日の雨は普段よりも強く、まるで車軸を下すような雨だったので、孫は大丈夫かと一抹の不安を抱えました。

すると居ても立っても居られずおじいさんは、急いで孫の後を追い雨の中へと駆け出します。薄暗い町中をしばらく捜すと、遠くの方に白い合羽を羽織った孫の姿を見つけました。

孫は畦道の近くで足をばたばたさせてはしゃいでいるようです。恐らく水たまりで遊んでいるのでしょう。おじいさんは精一杯の大きな声を出し孫を呼びますが、雨音のせいで孫は全く気がつきません。なのでおじいさんは、声の届く距離まで近づいていきました。

すると、近づく途中で孫の動きがぴたりと止まり、自分の足下を見つめたまま案山子のようにそのまま動かなくなりました。

どうしたのかと思い、おじいさんは孫に問いかけます。するとその声に気づいた孫は、おじいさんの方を振り返りこう言いました。


「……猫ふんじゃった」
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