十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

2016年03月の記事

『まとめ記事⑥』

2015年9月から2016年3月までのまとめ記事です。
この期間で大台の100記事・100作品を迎えることができました。ありがとうございます。ぶろぐ開設から2年と少しが経ちました。まだまだ未熟ではありますが、今後ともご愛好のほどよろしくお願いいたします。

◆オマージュ
『ホシと王子さま』……王子は純粋であってほしい。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-94.html
『嘘を知る子供』……狼おじさんにはなりたくない。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-110.html

◆フェーブル
『酔いどれヒグマと少年』……お酒の力で夢を見る。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-102.html
『鬼の居ぬ間に』……マメでなければフクはやってきません。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-109.html

◆ミスリード
『なりきりタイムズ』……自分を演じるときは、いつもドキドキ。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-96.html
『うちの子に限って』……信頼はときに人を眩ませる。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-106.html

◆リトルホラー
『煙に巻く彼』……彼の言葉は目にしみる。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-90.html
『独り法師な彼』……最愛な人は他人であれ。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-97.html
『トナカイになった彼』……トナカイはサンタよりもよい子のことを知っている。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-104.html
『写不真』……彼女の目線になって。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-107.html

◆レトリック
『紅差し指の糸』……憧れと理想的な糸。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-89.html
『透明なメニュー』……マスターの粋な計らい。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-91.html

◆エスプリ
『あいすむ』……恋人花火師になりたい。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-103.html
『はじる』……恥ずかしいは、大人への一歩。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-111.html

◆ニアリリカル
『誕生日』……最高に哀しい誕生日。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-113.html

◆140Novels
こちらは親切のカテゴリ。Twitterで載せた140字小説をまとめてみたものです。
『140字小説"Ⅰ"』
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-101.html
『140字小説”Ⅱ”』
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-114.html

今回は以上です。
こちらは過去のまとめ記事です。
『まとめ記事①』2014年3月20日
『まとめ記事②』2014年7月1日
『まとめ記事③』2014年9月29日
『まとめ記事④』2015年3月3日
『まとめ記事⑤』2015年8月25日

さて、この度私十文字兄人は“創作サークル綾月”にて、書き下ろし掌編を乗せております。タイトル『三人日より』です。こちらより読むことができます。ぜひお時間に余裕のある際には覗いてくださると幸いです。
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『140字小説”Ⅱ”』

さて、今回もTwitterで過去に投稿した140字小説をまとめて載せておきます。
余談ですが、小説の長さをよく大河小説や長編小説などと表現しますね。私はこのブログで短編よりも短い小説を掌編小説と表現していますが、それよりも短い140字小説は掌よりも小さい親指小説なんて表現してみようかなとちょっと考えています。

【首輪】
彼女へのプレゼントは何にしようか。この時季は毎年悩む。
人気者の彼女。彼女が他の男に取られないためには、プレゼントは重要だ。よし、ネックレスにしよう。彼女がずっと欲しがっていたのもの。少し高いけど奮発する。これで彼女は僕のもの。もう、僕は彼女に首ったけ。


【約束】
人と人との間には一本の線が存在する。その線は両手の小指から伸びいるのだが、その線は脆く、とても短い。直接絡ませ、きれいに結ばなければすぐに切れてしまう。
ただ、ある条件を満たすとその線は切っても切れないものとなる。それは同じ志を持った男女で結ぶこと。僕と君のことさ。

【信頼】
信頼という言葉を口に出して言ってごらん。ほら、シャボン玉みたいにだろ。一度にたくさん出ても、すぐに壊れてしまうんだ。でもそこに、砂糖を加えるだけで割れにくくなる。
だからほら、もっと甘えてごらん。そうすれば、僕は必ず君との約束を守るから。

【緊張】
汗は体中のどこからだって出るんだ。脇や掌、たまに瞳からだって。
その汗ってしょっぱいだろ。だからといって水と塩を補えばいいってわけじゃない。大切なのは、出さないようにすること。こうやって僕がずっと傍にいれば、緊張で震えることもないし、絶対に泣かせやしないから。


【屋上】
傾斜ある鍵盤の上を歩いて行く。その一歩一歩で奏でられる音は、鐘の音よりも美しい。
鍵盤の先にある扉を開くと、奏でた音色が景色となって広がる。
罪悪感はない。広がった景色を独り占めしている。この場所で、お腹の中の空気をいっきに吐き出す。
俺は自由だ、と。


【体育館裏】
影の中の灯りが一番美しい。
灯りの傍の影もまた美しい。
今日もまた、一点の灯りがともる。それはまだ淡い蝋燭の灯りのよう。
しかし時にすきま風が吹く。その風は無残にも灯りを消してしまう。
灯りの消えた影の中は、とても静かで音がよく響く。特に青春の叫び声が。

『誕生日』

温かくも
懐かしい
宝物を手に入れた
思いっきり泣いて
大丈夫
きっとわたしも泣いているから
死にたくはない
目で訴える
たったひとつだけ
今、叶うのなら

あなたを抱きしめたい

おかえり
そして、さよなら。

『節制とアルカナ』

ある日、アルカナは家で留守番をしていた。そんな時、玄関の扉をたたく音がして開けてみると、見覚えのある顔が立っていた。

「こんばんは、アルカナ様」

アルカナのことを“様”をつけて呼ぶ人はほとんどいない。彼はいつの日か子ども攫ったという疑惑を持たれた魔術師だ。

「何の御用かしら?」

すると魔術師は不気味に微笑む。

「御用というよりかは、少し私の手品を観てもらいたいのですが」

「構わないけど、あたしでいいのかしら?」

「ええ、むしろアルカナ様に観てもらいたいのです」

そう言うと、魔術師は上着のポケットから三枚のコインを取り出した。

「この三枚のコイン。今からこれを消してしまいます。アルカナ様にはそれがどこにいったのかを答えてもらいたいのです」

その言葉にアルカナは頷くわけでもなく、ただじっと魔術師の手元から視線を外さないようにしていた。

すると魔術師は三枚のコインを一度右手の拳の中に隠し、それを今度は左の掌にゆっくりと注ぐように移す。その刹那、空気を裂くような手の動きを見せ、気づいた時には両手の掌の上から三枚のコインが消えて無くなっていた。

「いかがですか」

得意げな表情で両手を広げてみせる魔術師に対して、アルカナは小さく溜め息を履いてから言った。

「そうね、答えるのもなんだか納得いかないところもあるけれど――右足の靴の中、首筋の襟元、そしてベルトの裏側ね」

「お見事です」

魔術師は指摘された場所から、三枚のコインをそれぞれ取り出してみせる。お互いの間に澱んだ空気が流れる。

先に口を開いたのはアルカナだった。

「……お見事ね。それは心からの言葉かしら」

「ええ、もちろん。全てのコインの在処を当てられるのは、アルカナ様の他にはいらっしゃいません」

「でも、あたしが当てたコインは初めから隠されていたものよ。あなたが最初に見せたコインは本当に消えてしまっているもの。捜しても見つけられないわ」

「それも含めての言葉です。アルカナ様のお力を少し試してみたかったもので」

「試す?」

「ええ、アルカナ様は恐らくそのお力はもう無意識に使ってらっしゃるのではないかと。先程のように瞑想することなく」

その言葉に、アルカナは大きく表情を変えることなく、ため息を吐くように言った。

「そうね。13を迎えた頃から瞑想するのは一種のパフォーマンスになっていたかもしれない。でもそれは、手品師の『種も仕掛けもございません』という常套句のようなものと一緒で、やったほうが格好がつくのよ。それがあたしの名前の由来でもあるから」

すると魔術師は頭に被っていたシルクハットを取り、自らの胸に当てそのまま頭を下げた。

「申し訳ございません。そのようなことをおっしゃっていただくためにお伺いしたわけではないのです。本当はお礼を申し上げたくて」

「お礼というのは、もしかして以前にあなたのお孫さんを捜した件かしら?」

「あ……はい、そうです。やはりお気づきでしたか」

「ええ、あなたとは初めてお目にかかった時から気になっていたので」

「まさに脱帽です。アルカナ様、あなたは本当に13歳なのですか」

その言葉に、アルカナはにっこりと微笑んで答えた。

「あなたこそ、80を越えた老人には見えませんよ。まして元王様になんて見えっこないわ」

『はじる』

「ねえ秀也、あんた彼女でもできたのかい?」

「え! いきなりなんだよ」

「だってさ、最近あんた携帯ばかり握っちゃって。携帯が恋人みたいにさ」

「はあ? ちげえよ、ゲームしてんだよ」

「ゲーム? あんたはゲームしながらニヤニヤするんかい」

「楽しいんだよ。悪いか」

「別に悪いなんて言ってないじゃん。……あれ、もしかして図星だった? そんなに強く否定するなんて、逆に怪しい」

「うるさい。お母さんには関係ないだろ」

「あらやだ。ふくれっ面なところを見るとますます怪しいわ」

「だから違うって」

「もう、恥ずかしがっちゃって。昔は真里ちゃんが好きって笑顔で言ってたくせに」

「そ、そんな昔のこと覚えてねえよ」

「でも、そのあんたも大人になったってことね。羞恥心は大人の証ね」

「それじゃ、お母さんも気をつけなよ」

「え、何を気をつけるって?」

「羞恥心を忘れないようにだよ。最近裸で家の中歩き回るんだから」

「……本当ね、思い返してみると色々心当たりがあるわ」

「呆けているわけじゃないんだから、忘れないこと。羞恥心。お母さんが子供に戻っちゃったら、困るのはこっちなんだから」

「そうね。気をつける。――って上手く話すり替えたわね」

「お母さん。遠慮ってのも大人の証じゃないかな」