十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

2015年08月の記事

『まとめ記事⑤』

2015年3月から8月までのまとめ記事です。長らく期間が空いてしまいました。作品数ももう少しで大台にたどり着きます。今年中にたどり着けるように努めて参ります。

◆オマージュ
『灰かぶり雛』……記憶が無いものは目では見えない。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-75.html

◆フェーブル
『窮鼠、臍を噛む』……この話、彼の十八番の話だそうです。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-76.html

◆ミスリード
『万愚節』……この物語はフィクションです。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-70.html
『ネジがひとつ多いロボット』……どうせなら完璧なロボットは、人間よりも人間らしくあってほしい。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-82.html

◆リトルホラー
『ドライフラワー』……潤いのあるものと、乾いたもの。違いは歴然。でもどちらも美しい。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-72.html
『生きている実感』……生きている実感なんて必要ない。だって、生きているだけで十分だから。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-80.html
『夢枕に立つ彼』……彼は恨んでなんかいない。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-84.html

◆レトリック
『雨棒作法』……好きな色は虹色。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-78.html

◆エスプリ
『わする』……願いを叶えるのは自分自身で。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-73.html
『ゆかしい』……三角形は歪。丸い方がゆかしい。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-77.html
『ほりくずす』……女性目線で書いてみました。やっぱり少し難しい。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-83.html

◆ニアリリカル
新設のカテゴリです。七歩の才はないのですが、文章表現の勉強ができたらと。
『老衰』……誰もが望む最期ではないかと。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-86.html

今回は以上です。
こちらは過去のまとめ記事です。
『まとめ記事①』2014年3月20日
『まとめ記事②』2014年7月1日
『まとめ記事③』2014年9月29日
『まとめ記事④』2015年3月3日

さて、以前にたようなツイートしたのですが、過去に書いた作品が、そのまま積み重なっていく古書のように、くたびれ歪んでしまわないように、つまりもう一度読んでもらえるようにと、こちらにtaskey転載しようと思っています。気が向いたら覗いていただけると幸いです。
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『老衰』

ふと ページをめくる手が止まる
栞を挟み 閉じた本の厚さを感じて我に返る
もう、こんなにも読み進めていたのかと
末尾に綴られる物語
忘却の彼方へと向かうことはないだろうか
蝋燭の灯火が これまでの人生を儚くも照らしてくれた
終章へとページをめくる
手が勝手に過去を振り返りだす
拍手喝采 そんな夢物語の結末ではない
今思えば 小さな灯火を消し去るような風もなかった
選ばれし者でもない ……だけど、幸せだ
何かに感謝すべきなら
いつまでも傍にいてくれている全ての人に伝えたい。

不死も幻ではない、と。


最後のページをめくった時、灯火により本は灰と化し、人々の記憶からもいつかは廃れるのだろう。

『戦車とアルカナ』

アルカナの不思議な力はもはや、国中に知られる存在となりつつあった。

依頼を受け、捜し物を見つける。

最初は善意で行っていた。依頼人も町の住民がほとんどで、アルカナの顔見知りやおばあちゃんの古くからの付き合いがある人物だったりした。なので、依頼の報酬は受け取っていない。ただ、依頼主によっては、お礼の品を送ってきたり食事をごちそうしてくれたり、はたまたお金を置いていく者もいた。

ギブアンドテイク。近くに住んでいる住民だからこそ、アルカナも快く協力していた。

しかし、いつしか顔も性格も知らない人からの依頼も届き、報酬の代わりに請け負うようになった。その忙しさに以前のようなおばあちゃんと二人で静かな暮らしが出来なくなっていたのだった。

そして依頼の数も増え、依頼の優先順位を内容や報酬のクラスで判断している。商売をしているわけではない。それはわかっていても、本心では自分の不思議な力が便宜にはかられているように思えて仕方なかった。

そんなアルカナを見かねてか、おばあちゃんが優しく声をかけてきた。

「アルカナ。『おもちゃの戦車』というお話を知っているかい?」

「ううん。初めて聞いたわ」

「それじゃ、少し聞いてちょうだい」

おばあちゃんは、手元に本があるわけでもなく、自分の記憶から反芻するかのように、『おもちゃの戦車』という名の物語を語り出した。



とある戦渦の中、一人の兵隊が幼い少女と出会った。辺りに両親はおらず、どうやらその子は戦争孤児であった。
戦争に関係のない孤児を守ることも兵隊の大切な役目。その兵隊は少女を保護し、安全なシェルターまで連れて行くことにした。その道中、少女は兵隊にあるお願いをした。
「あの車に乗りたい」
少女の言う車とは戦車のことだった。もちろん兵隊以外の人間が戦車に乗ることは規則違反である。しかし、その兵隊は快く少女の願いを受け入れ、戦車に乗せてあげた。すると少女は更に車を動かして欲しいと願い出た。
それをこれまた兵隊は快く受け入れ、戦車を動かしてしまった。
すると少女は少し興奮したのか、今度は戦車の弾を撃って欲しいと願い出た。
さすがにそれは出来ない。だがしかし、少女を悲しませたくはない。そこで兵隊は少女に言った。
「ごめんね。実はこの車はおもちゃなんだ。だから、弾は撃てないんだよ」
「でも、これと同じような車が弾を撃っているのを見たことがあるわ」
「それは、ロボットだ。確かにロボットなら弾は撃てるけど、このおもちゃでは撃てない」
「それじゃ、意味がないじゃない」
少女の言葉に兵隊はかぶりを振る。
「違うんだ。このおもちゃの車は君みたいな弱い人々を危険から遠ざけるために、本物のロボットと似せて作ってあるんだ。君たちを怖がらせることにはなるけど、この車を見たら人々は驚いて逃げていくだろ。おもちゃにもそんな大切な役割があるんだよ」
少女は少し不満そうな表情をしたが、それ以上兵隊に何かを願い出ることはなかった。
そして別れ際、兵隊は少女に告げた。
「いいかい。ロボットは人間が便宜をはかるために使う道具だけど、本来おもちゃは人間が楽しむための遊具なんだ。だからこんなとこにあってはいけない」
それを最後に兵隊は少女の側から離れた。そして、おもちゃの戦車で戦渦の中へと戻っていった。



話を終えると、おばあちゃんはアルカナに向かって手のひらサイズのおもちゃを手渡した。

「これはその時、兵隊さんが渡してきたのよ」

それはブリキでできたおもちゃの戦車だった。当然、弾など撃てはしない。

「アルカナ、あなたはおもちゃになりなさい。ロボットではなく、人々を楽しませるおもちゃに。そうすれば、今あなたが考えている悩みもどうでもよくなっちゃうわよ」

おばあちゃんはそう言って、アルカナの頭を優しく撫でた。

『夢枕に立つ彼』

彼が亡くなって一年が経つ。

この一年間はずっと彼のことが頭から離れなかった。

それも、彼が毎日ではないが定期的に私の夢枕に立つからだ。

私が生活の中でストレスや悲しみで苦しんでいる時。今後の進路で悩んでいる時。そして独り寂しくいる時。

決まって彼は夢枕に立つ。

私の深層心理が彼を見せているのだろうけど、彼は目の前に現れるだけで、何も言葉をかけてくれない。こっちが話しかけても、小さく微笑むだけで首を動かすこともしない。

見守ってくれている。

そう思うように努めた私は、彼の存在を忘れることなく、まるで今でも彼がこの世で生きているように生活してきた。

そして今日。彼の命日の夜に、彼は私の夢枕に立った。

「今日で、一年だね」

私は声をかける。彼はいつものように微笑むだけ。かと思ったが、今日は初めて彼が言葉を発した。

「そうだね」

意表を突かれた私は、次の言葉がすぐには出てこなかった。すると彼のほうから口を開いた。

「今日は君に、言っておきたいことがあって」

なに?
どうして急に話すようになったの?
今まで何も答えてくれなかったのに。

言いたいことは山ほどあるのに、なぜか声として出ない。そんな私をよそに彼は続ける。

「僕が死んでから君のことを、ずっと見てきた。僕のことを、君が忘れてしまわないか、それがずっと不安だった」

忘れるわけがない。
だからこうして夢枕に立ってるんじゃない。

「でも、その不安ももう必要、ないみたいだ」

え、それじゃ……。

「今日で君に会いに来るのは、最後にしようと思う」

だめ。あなたは、私の心の支えなの。

「過去の思い出は時々、思い出すぐらいが丁度いい。でも未来の思い出は常に、思い描いていなくてはいけない。僕は、そう思うんだ」

そんなこと言われても、あなたのいない未来なんて……。

「想像、できるよ。マッチ売りの少女だろ。君は」

え?

「燃えさかる炎の中、想像したんだろう。僕の、いない未来を」

忘れていたあの日のことが、少しずつ蘇ってきた。

陽の明かりの届かない真夜中。私の隣で彼は眠っていた。
私は彼との決別を望んでいた。彼のことを嫌いになったわけではない。むしろ大好きだった。しかし、彼よりももっと好きな人が出来てしまった。
彼は私のことを心から愛していた。それを知っていたから、単純に別れを切り出したところで、彼が素直に頷いてくれるはずはなかった。
何度も考えた。彼と別れる一番の方法を。
そして最終的にとった行動は、火の明かりで彼を想像の世界へ誘うことだった。

「想像の世界は自分の、意のままになる。だけど、その意は正直だ。僕が今日まで一言も話せなかったのは、君は心の奥底で、僕から何を言われるのかを恐れていたからだ」

「……ごめんなさい」

ようやく声が出た。すると最期に彼は言った。

「マッチ売りの少女は想像の中で眠る。少女は幸せだった。想像することで、孤独から解放されたんだから。死ぬことよりも、永遠の孤独の方が恐ろしいんだ」

『ほりくずす』

「俺の彼女がCMに出るらしい」

「へえCM、すごいじゃん」

「まあでも、ちょい役らしいよ。某回転寿司のやつで、美味しいって一言いってるらしいんだけど」

「それでもすごいって。女優目指してるだろ、彼女」

「そう。応援してやりたい気持ちもあるんだけどさ……」

「自分が惨めに思えてくるって?」

「ああ。一度は俺も目指した世界だからな」

「そうだよな。お前らは養成所で出会ったんだもんな。今や彼女は女優への階段を上っていて、お前はしがないバイトリーダー」

「言ってくれるな。ただ、俺は彼女を信じている。それが出来なくなったら終演だろ」

「次第に忙しくなり、二人で会える時間が少なくなっていく。すれ違い、言い争いが増え、そして二人の恋物語はエンドロールへ」

「やめろやめろ。いくらお前が脚本家を目指しているからって、俺の人生を勝手に描くな」

「悪いな、しかし今のお前の人生、ありきたりすぎて描くには少し物足りない」

「物足りないって、事実は小説よりも奇なりって言うだろ。これから俺もお前も驚くような人生が待っているかもしれない」

「……まあそうだな。ただ、それにはオレサマが加わる必要があるだろ」

「なんだよ、それ。急に態度変えやがって」

「なあに、お前を主人公にして、オレサマが語り手となり、今までにない恋物語を紡いでみせるよ」

「変に自信があるんだな」

「お前もそのうち気づくさ。己の中の眠った本能に」