十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

2014年09月の記事

『まとめ記事③』

2014年7月から9月までのまとめ記事です。おかげさまで50記事という節目を迎えることができました。(作品数は47作ですが)
今後ともよろしくお願いします。

◆オマージュ
『眠れぬ仮の美女』――仮の美女なのですから、付きまとわないで欲しいです。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-43.html

◆フェーブル
『囮の鮎の化かす様』――運が良いとか悪いとか、言ったもん勝ち。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-40.html
『虹色の羊の歩み』――私の好きな色は虹色。そして未年。そこが着想です。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-48.html

◆ミスリード
『声、届かずとも』――亡くなった人に会える。そんな神秘的なこと、一度で良いから経験してみたいものです。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-45.html
『ピースという名の小品文』――他者への疑念が平和を作っていると考えると、感慨にひたります。※50記事記念作品。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-50.html

◆リトルホラー
『腐葉土になった彼』――同じ想いで繋がった相手でも、同じことをするべきではないのです。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-42.html
『ゴミ拾い』――本当に拾うべきなのは、失った思い出です。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-47.html

◆レトリック
『瞹眛喫茶』――『まとめ記事②』にも載せたのですが、シリーズものとしてご紹介。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-35.html
『思い人のような』――僕に本当の思い人のような方が現れることを願うばかりです。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-38.html
『グレーのような薔薇色』――幸せになることを躊躇ってはいけない。なればいい。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-41.html
こちらの三作は、瞹眛喫茶シリーズとして書きました。今後このシリーズが続かは未定です。

◆エスプリ
『しつこく』――忘れがちですが、今年は午年なので。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-39.html
『ほりさげれば』――よくよく考えれば、よくあることかな。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-44.html
『いぎたない』――熟睡している人を見ると、悪戯したくなっちゃいますね。
http://kairotto.blog.fc2.com/blog-entry-49.html

以上です。
最近こちらのtaskeyというサイトにて、少し長め(短編程度の)作品を公開させて頂いております。機会がありましたら、覗いてもらえると嬉しい限りです。
またもう少しで当ブログ一周年を迎えます。何か特別なことをするつもりはございませんが、一年間続けてこられたことは今後の自信にも繋がると思うので、そのことを胸に日々精進していこうという所存です。
最後に何かご意見ご感想、あるいは少しおこがましいのですがこんな作品を書いて欲しいなどリクエストがありましたら、快く受け入れていこうと考えております。どのような形でも構いませんのでご連絡頂けたらなと。
よろしくお願いします。
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『ピースという名の小品文』

※五十記事記念作品


 パズルのピースをはめていた私は、ふと残りわずかのところで後ひとつピースが足らないことに気づく。
 この瞬間、ぷつりと集中の糸が切れ手が止まる。しばらくの思考の停止の後、はっとして辺りの捜索を始める。

 見当たらない。

 本来、真っ先に疑うべきは自分自身。最近物忘れが激しいのもある。無意識のうちにどこかの物影に弾いてしまったのかなどと。しかし、どうしても他の要因を当たってしまう。

 子どもが遊んだ時になくしてしまったのか。
 それともペットの猫がどこかへ持っていってしまったのか。

 あるいは、妻が意図的に抜いておいたのか。

 部屋に隠してあったカメラを手に取る。渦巻く疑念をすっきりさせたくて。そして録画されている映像を遡る。
 映像にはこのパズルで遊ぶ妻と子どもたちの姿。側には猫もいる。数分後にはパズルが完成する。この時にはまだ、パズルのピースは欠けていない。

 別の日。
 妻が部屋の掃除をしている。すると、インターホンが鳴る。妻が掃除機ごと部屋を出て行く。部屋の扉は開けられたまま。入れ替わりに猫が入ってくる。猫は部屋のベッドの上で丸くなる。
 しばらくして、その部屋に妻と一緒に見覚えのある男が入ってくる。猫はその男の存在に気づいているのかいないのか、よくわからないがじっとしたままだ。
 そして、二人でパズルを始める。二人は寄り添い語り合いながら穏やかな時間を過ごす。パズルが完成に近づいた頃、妻がピースがひとつ足らないことに気づく。辺りを捜してそれでも見つからないと、「子どもたちのせいかもしれない」と諦めたかのように呟く。


 しかし、それは違う。確実にカメラは捉えていた。――残りひとつのピースを、男がポケットの中に隠すところを。

 そしてそのピースは今もずっと、男のポケットの中で眠っているのだろう……。


 疑うことで解決への道筋が見えてくる。しかし、信じることが大切だと謳う者もいる。そのふたつを天秤にかけたところで、揺らぎ方は人それぞれなのかもしれない。
 ただ、今の世の中、他人を疑うことで秩序が保たれていると言ってもいい。法律、警察、医者、そして夫婦だって。

 私は額の汗をぬぐい、自分のポケットから残りひとつのピースを取り出して、未完成のパズルにはめ込んだ。

 ひとつ言っておく。私は、平和主義者である。

『いぎたない』

「まただね」


「本当だ」


「どうしてこうなっちゃうんだろうね」


「どうしてかな」


「悪い夢でも見てるのかな」


「悪い夢?」


「なんだか苦しそうじゃない」


「元々こんな顔じゃなかったかな。あんぱんをフライパンで叩いたような」


「ははっ、そうだね。あ、そうだ! ちょっと悪戯しちゃおうか」


「いいね、どうしちゃう?」


「このまま船に乗せて川に流しちゃおうか」


「それは最高だ。そのまま海の彼方までいっちゃうんじゃないの」


「でも、途中で起きた時の顔も見物だろうね」


「うんうん。それじゃ早速」


《ヨイショ!》


「――どう?」


「ぜんっぜん起きない」


「ふふっ、白河夜船ってこんな感じのことかな」


「ん? 何それ?」


「え、いや……あ、ひっくり返った」


「あ、本当だ」


「……浮いてこないね」


「こないね」


「悪夢だ」


「うん。悪夢だ」

『虹色の羊の歩み』

広大で緑の生い茂る丘に、虹色の毛をした羊がいました。

しかし、その虹色の羊の毛は、飼い主がどんなにアピールをしても気味悪がれ、その毛を欲しがる者はいませんでした。
そして誰にも求められることなく長い月日が経ち、虹色の羊はいつしか群れについていくこともできないほどに老いてしまいました。

それを見かねた飼い主が虹色の羊に対して言いました。

「お前はおれにとっては大切な羊だ。感謝している」

「何をおっしゃいますかご主人様。あなたは他の者とは違う私を見捨てずに育てて下さいました。感謝するのはこちらでございます」

飼い主の想いを悟った虹色の羊は、ゆっくりとした足取りで丘を下っていきます。飼い主はその後を追いながら続けます。

「お前をこのまま歩かせたくはない。どうにかできないのか?」

「どうにかとおっしゃっても、老いた私には歩くことしかできません」

飼い主は頭を抱えます。そしてしばらく思案してから、飼い主は言いました。

「何か、願いはないのか? できる限りのことはする」

すると虹色の羊は地面に生えていた草をむしりながら言います。

「願いですか。……そうですね、ではひとつだけ、お伺いしたいことがあります」

「私にか?」

「ええ、そうです。――私の毛の色は何色ですか?」

その問いに、意表を突かれた飼い主は言葉を詰まらせた。それを見て虹色の羊は言いました。

「ご主人様。あまり深く考え込まないで下さい。私の毛は赤や青、緑など一色ではないことぐらい理解しております。つまり私のような他の色の交ざった毛は、光の無い黒い毛ではないのですか。色は重ねるごとに黒く滲んでいきますでしょう。ですから、私の最期は火葬でお願いしたいのです。炎に包まれ灰となるのが理想なのです」

その言葉に、飼い主はすぐにかぶりを振ります。

「それは違う。確かに羊の毛は本来は白だ。だけどお前の毛はそれよりも白く輝いている。そうだろう。色を重ねると黒くなるのは人が作り出した色だからだ。でも自然が作り出した色は重ねるとより白くなる。それが太陽だ。だからお前の毛の色は虹色でも、ましてや黒でもない。より輝く白だ!」

それを聞いて虹色の羊は照れくさそうに微笑み、何も語らずにその歩みを進めていきました。

その後、飼い主は自宅に大切に保管してあった虹色の毛で一枚の大きな毛布を作り、それで真っ白な羊を包めてあげました。

『ゴミ拾い』

ふと歩みを止める行為というのは、大抵あまり良い兆しではない。

純子が真夜中の道中でふと歩みを止めたのも、視界の端に異様な光景を捉えたからだ。羽虫が群がる街灯の下に、小学生ぐらいの少年が俯きながら座っていたのだ。

当然最初は見間違いを疑った。錯覚や思い込みである方が、一瞬の緊張で終わる。しかし、その少年はまやかしでも幽霊でもなく、確かにそこに存在していた。さらにその少年のいた場所が、ゴミ捨て場であったことが、余計に純子の恐怖心を煽った。

「ぼく、一人?」

恐る恐る問いかけた純子の言葉に、少年は小さく頷く。

「こんなところで何してるの?」

「捨てられた」

その言葉は、石槍が胸に突き刺ささったかのように響いた。

嫌な予感は当たっていた。しかし本当に捨てられたのか、それとも自らが望んで自分を捨てたのかまでは判断しかねた。

純子は少年をこのままにしておくわけにはいかないと思い、近所の交番まで連れて行くことにした。

「こんなところにいたら危ないよ。お巡りさんの所に行こう。一緒に連れて行ってあげるから」

すると少年は首を横に振った。

「ダメだよ。僕はゴミだから。ここにいなくちゃ」

それから何度か純子は少年を説得したのだが、同じような言葉を繰り返しては頑なにゴミ捨て場から動こうとはしなかった。

それならもう警察の方からここに来てもらうしかないと思い、純子は携帯を使い警察に連絡をすると、近所の交番から数分後、この場所に来てくれることになった。

警察を待つ間、純子は少年に対して何かできることはないかと思案していると、少年が蚊の鳴くような声で何か呟いた。

「ん? 何か言った?」

すると今度は純子の目を真っ直ぐ見つめて少年が言った。

「ゴミ……拾ってくれないの?」

訴えかける少年の瞳は、ゴミとは全くもって似つかわしくないほどに澄んでいて、深い皺が刻まれた純子の顔を映していた。

「ねえ、僕のこと思い出してよ。お祖母ちゃん」