十文字掌編小説ぶろぐ

べんべんとした日常に豊かな物語を。短くたって構わない。豊かなものでさえあれば。 不定期の更新です。月3回を目標に。

カテゴリー "140Novels" の記事

『140字小説“Ⅲ”』

 今回も過去にTwitterにて、投稿しました140字小説こと親指小説を載せていきます。
 掌編小説を書くことがメインの当ブログですが、この親指小説はその短さゆえ叙情詩的な表現になりがちな面があります。日本には短歌や俳句といった文章表現が古来から存在していますので、それらとは一線を引いて区別していきたいとは個人的に思っています。
 詩を書くなら詩として、小説なら小説をというこだわりははっきりと持っていきたい。ただ、その線引きが曖昧なのはひとつの課題でもあるのかもしれません。私自身が個人的にその違いを定義するなら、詩には感情を、小説には物語を。それらの色を強く表現して書いていければ、それぞれの魅力が出せるのだと思います。
 これはあくまでも個人的な意見です。そうできるように精進していきたいという願望を込めて。


【挨拶】
駅のホームの先に彼女はいた。何年ぶりだろう。彼女はまだ僕に気づいていない。
何て声をかけよう。「おはよう」いや「久しぶり」か。
僕を覚えているだろうか。足取りは重かった。
しかし歩み寄る僕よりも早く、特急電車が僕を追い越した。
ごめんやっぱり「さよなら」だ。

【溺愛】
私は世界で一番美しい?
そうね、付け睫毛をつけたらどうかしら。
こう?
後、ファンデも塗った方が良いわね。
これで大丈夫?
いいえ、もっと笑いなさい。笑顔が大切よ。
ふふっ。そうね、なんだか楽しくなってきたわ。
そう。貴方は私。鏡の中では世界で一番美しいんだから。

【小学】
「おっきくなったら結婚しよ」って君がクラスの女子全員に同じこと言ってたから
「あんたみたいな男は結婚なんてできないよ」って教えてあげたら
君は涙を浮かべて黙っちゃうから仕方なく
「あたしならいいよ」って言ってあげると
君は「うそだし」って捨て台詞
かわいくないな

【中学】
女子みたいな声だった君が
「太ったね」って躊躇いもなく言うから
悔しくなって「うるさい」って言い返そうとしたらなぜか涙が出てきて
私は隠したつもりだったんだけど
それを見た君が急に慌てちゃって
「ごめん」って大人みたい声で謝るから
さっきから胸が苦しいんだからな

【高校】
自転車を押す君が「持つよ」って言うので
「ありがとう」って鞄を渡そうとしたら
「違うよ」って私の体を抱えて荷台に乗せるから
「違反だぞ」って言ってやると
「軽い軽い」って笑うから
てっきり違反のことかと思ったら
「お前のことだよ」って
お互いおっきくなったなって
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『140字小説”Ⅱ”』

さて、今回もTwitterで過去に投稿した140字小説をまとめて載せておきます。
余談ですが、小説の長さをよく大河小説や長編小説などと表現しますね。私はこのブログで短編よりも短い小説を掌編小説と表現していますが、それよりも短い140字小説は掌よりも小さい親指小説なんて表現してみようかなとちょっと考えています。

【首輪】
彼女へのプレゼントは何にしようか。この時季は毎年悩む。
人気者の彼女。彼女が他の男に取られないためには、プレゼントは重要だ。よし、ネックレスにしよう。彼女がずっと欲しがっていたのもの。少し高いけど奮発する。これで彼女は僕のもの。もう、僕は彼女に首ったけ。


【約束】
人と人との間には一本の線が存在する。その線は両手の小指から伸びいるのだが、その線は脆く、とても短い。直接絡ませ、きれいに結ばなければすぐに切れてしまう。
ただ、ある条件を満たすとその線は切っても切れないものとなる。それは同じ志を持った男女で結ぶこと。僕と君のことさ。

【信頼】
信頼という言葉を口に出して言ってごらん。ほら、シャボン玉みたいにだろ。一度にたくさん出ても、すぐに壊れてしまうんだ。でもそこに、砂糖を加えるだけで割れにくくなる。
だからほら、もっと甘えてごらん。そうすれば、僕は必ず君との約束を守るから。

【緊張】
汗は体中のどこからだって出るんだ。脇や掌、たまに瞳からだって。
その汗ってしょっぱいだろ。だからといって水と塩を補えばいいってわけじゃない。大切なのは、出さないようにすること。こうやって僕がずっと傍にいれば、緊張で震えることもないし、絶対に泣かせやしないから。


【屋上】
傾斜ある鍵盤の上を歩いて行く。その一歩一歩で奏でられる音は、鐘の音よりも美しい。
鍵盤の先にある扉を開くと、奏でた音色が景色となって広がる。
罪悪感はない。広がった景色を独り占めしている。この場所で、お腹の中の空気をいっきに吐き出す。
俺は自由だ、と。


【体育館裏】
影の中の灯りが一番美しい。
灯りの傍の影もまた美しい。
今日もまた、一点の灯りがともる。それはまだ淡い蝋燭の灯りのよう。
しかし時にすきま風が吹く。その風は無残にも灯りを消してしまう。
灯りの消えた影の中は、とても静かで音がよく響く。特に青春の叫び声が。

『140字小説“Ⅰ”』

ブログの更新が多少疎かになってしまい申し訳ございません。そこで何かひとつ対策を練ったところ、掌編小説よりも短い、140字小説を書こうかと考えました。
140字小説とは、現在Twitterでの文字数140字の中で物語を作るという新たな形。現代であるが故に生まれた形式かと。初めTwitterはブログの宣伝用に活用していたのですが、140字小説を知り140字大賞や創作サークル綾月に参加することによって、140字小説を書く機会がありました。
そこで、今回ブログに140字小説を何作か記載しようを思います。Twitterでも一度紹介している作品もありますが、どうかご了承ください。

【喩え】
「喩えるなら雨は涙。風は寂しさ。雷は怒り。そして晴天は笑み」
すると、雄弁に語る彼が訊いてきた。
「それじゃ幸せは何だと思う?」
少し考えて私は答える。
「虹、かな」
「違う。答えは雪だ。雪が降るとわくわくする。積もればドキドキする。そして溶けていくとそわそわするだろ。それが幸せだ」

【誘拐】
今回の依頼は誘拐。しかし誘拐は犯罪だ。被害者とその親族が誘拐されているということを知らずに誘拐する。
そうすれば犯罪にはならないし、誰も傷つかない。
だから今回ターゲットにはある種を撒く。海外旅行というプレゼントを。
私はコンダクターとして彼女を誘拐する。身代金は当日持ってきて貰おう。

【呟き】
「つまらない」
どうしたのと聞くと、彼は背中を丸めてつまらないと呟く。何を聞いてもつまらないと呟くので、私は彼に背後から「だ~れだ」と目隠しをすると、彼は急に背筋を伸ばし言った。
「おお、君は魔術師か。僕の視界を奪うなんて。ならば君を冒険の仲間にしよう」
そして私たちの物語が始まる。

【爪垢】
赤く塗られれば妖艶に。花を添えれば麗しく。絵を描けば優雅になる。
しかし、彼女は透き通るよう。飾ることなくありのままであった。
嗚呼、どうしたら彼女を自分のものにできるであろう。
せめてもの願い。彼女の爪の垢を煎じて飲みたい。

【口づけ】
口を失った。これでは声が出せない。だけど手話を覚えて筆談で補った。
口を失った。これでは食事ができない。だけど点滴で栄養を補給しなんとか補った。
口を失った。これではキスができない。これだけはどうやっても補えない。だれかわたしに口づけを。


そして、最後に掌編『蜚蠊が嫌いな彼』を140字小説で表現してみた作品です。
【蜚蠊】
彼は虫が大好きだった。語り出すと止まらないほど。それ以外については全てが彼氏として完璧な彼なのだが、ある日事件は起きた。
私達が住む部屋にゴキブリが出た。私は「早く殺して」と叫ぶと彼は言った。「ごめん。やっぱり虫は殺せないよ」と。
私は彼の頭を思いっきり叩いてやった。